傾聴トレーニングのコツ6つ|最短でスキルを習得する方法

傾聴トレーニングの様子

傾聴はスキルですので、トレーニングすれば必ず身に付きます。

ただし少なくとも3ヶ月は継続する必要があります。

そのモチベーションを保つためには、傾聴のスキルを細分化して、自分自身が出来るようになった事も意識しながら、出来ていないポイントを改善していく事です。

この記事では、心理カウンセラーとして20年以上傾聴を使っている私が、傾聴トレーニングのコツを5つ紹介します。

※すでに傾聴を習ったことがある、現在トレーニング中の方向けの記事です。傾聴に触れたことがない方はまず、傾聴とは|意味と効果、方法を動画付きでプロが解説をご参照ください。

動画で知りたい方はこちら

1 段階的に取り組む

傾聴のスキルは大きく5つに分けられます。

  1. 受容的な態度
  2. うなずきとあいづち
  3. オウム返し
  4. 共感のことば(気持ちを汲み取る)
  5. 効果的な質問

初期にこれらすべてを一気に身に付けようと取り組むのは、あまり効果的ではありません。始めはうまくやれないポイントが多くて当然ですが、一気に取り組むと意識を配るポイントが分散されすぎて絞れないためです。

ですので始めは受容的な態度+うなずきとあいづち+オウム返しまでに絞って取り組み、相談者役の方には質問がなくてもある程度区切りながら話してもらうのが良いです。

特に効果的な質問(オープンクエスチョン)は難易度が高いため、他のスキルがある程度できるようになってから取り組むのが効率的です。

トレーニングの時は始めから傾聴技法すべてに取り組むのではなく、オウム返しまでがある程度できるようになったところで共感を加え、それらのスキルがある程度意識せずにできるようになった点で質問も加えて段階的に取り組むのが良いです。

2 傾聴トレーニングで行う事を具体的にする

これはトレーニング毎に、そのトレーニングの時間内で達成できそうな目標を明確に定めて取り組むということです。

目標は具体的に行動できる内容が良いです。(例:あいづちを的確に入れる、オウム返しを相手に届ける等)

ただしその時々の自分自身の課題を明確にするためには、トレーニングで的確なフィードバック(改善すべきポイントのアドバイス)をトレーナーから受けるのが適切です。

特にトレーニング生同士で傾聴ロールプレイをすると、どうしてもこのフィードバックがおおまかになりがちです。
「もっと積極的に」「表情が暗い」などと言われる事があるかもしれませんが、アバウトに言われると納得がいきにくいです。

その時々の自分の課題を明確にするポイント

まず、「改善するともっとよくなる」ポイントを具体的に、明確にします。いわゆる、もう少しだったポイントをはっきりとさせます。

例えば、「もっと積極的に!」と相手のトレーニング生から言われたのであれば、具体的に、ロールプレイの会話のどの部分で積極的に関わってもらえていないと相手が感じたのか?そして「積極的に関わってもらえてなかった」と感じられたポイントは何なのか?

  • 聴き手の声が小さいからそう感じられたのか、それとも
  • 聴き手の表情や姿勢からそう感じられたのか、それとも
  • 聴き手の気持ちの汲み取りが弱かったのか、それとも
  • 踏み込んだ質問をしてもらえず、もう一歩話せなかったのか、

とにかく明確に、具体的にしていきます。

そしてもし可能であれば、積極的にかかわってもらえなくて「話していてどうだったのか?」という点もロールプレイが終わった後に話し手の方から聞いて、明確にしてみて下さい。

積極的にかかわってもらえなかったことで、多くを話そうとは思えなかったのか、寂しく感じられたのか等など。

というのも傾聴で最も大切なのは、聴き手が上手く傾聴技法が出来ていたかどうかではなく、話し手(相談者)がその聴き方でどう感じたのか?だからです。

改善すべきポイントを明確にするメリット

改善すべきポイントが明確になると、当然ですが

具体的に次回からどう聴けばよいか?どのポイントに気をつけるべきか?

が明確になります。

次の傾聴ロールプレイでは「積極的にかかわろう」という目標を持ってやるのと、「積極的にかかわってもらえていると感じてもらうために、声をもう少し大きめに相手に届けてかかわっていこう」という目標をもってやるのとでは、明確さが違う分、聴き手の行動が変わってきます。

次のトレーニング、ロールプレイではその明確になったポイント(例:.声をしっかりと相手に届ける)を気をつけて取り組み、相手の方に、その気をつけたポイントはどうだったのかを確認していけば、確実にステップアップしていきます。

実は傾聴やカウンセリング自体が、具体的に、明確にしていく会話でもあります。

話し手は今どんなことを問題だと思っていて、どんな状況で、どんな気持ちで、問題の本質は何で、どんな風になりたいと思っていて、問題解決のために具体的にどうしていけばよいのか。具体的に、明確にしていくことの連続です。

ですので傾聴トレーニングをしていて、聴き手だけがトレーニングになるのではなく、話し手も具体的に改善点をフィードバックすることで、トレーニングになります。

そしてもしあなたが話し手で、聴き手に傾聴ロールプレイのフィードバックをするときは、できるだけ相手が受け取りやすいようにお伝えしてあげて下さい。

もっと気持ちを汲み取って!声を大きくしてかかわって!ではなく、

この部分の聴き方は、話していてこう感じた。こんな風に聴いてもらえると、このことも話そうと思える。ここをもっと聴いてもらえると気持ちがスッキリできた。

という感じです。

相手が受け取りやすいように伝える力は、カウンセリングの終盤でも絶対不可欠ですし、普段の生活でも心がけることで円滑な人間関係を築けます。

3 相手と良い関係を築きたいと思ってスキルを使う

傾聴トレーニングに取り組んでいると、会話しながら各種技法が出来ているかどうか意識する必要があるため、どうしても自分自身に強く意識が向き、不自然な会話になることがあります。

会話しながら相手の状態に意識が向いているのではなく、自分自身に注意が強く向いている状態です。

自分自身がどこでうなずきやあいづちを入れるか、大切な言葉をオウム返しして相手に伝えるか、どんな質問をすればいいのか?など、自分に強く意識が向き、相手のことがおざなりになる(会話しながら意識が自分に強く向く)会話です。

こうなると当然ですが、ラポール(絶対的な信頼関係)が築ける会話にはなりません。

これは多くの人が通る道で、傾聴トレーニングの目的は自分自身が傾聴スキルを身に付ける事ですので、自分に意識が強く向いて当然です。ただし傾聴の本来の目的は、相手の方に自由に話してもらって楽になってもらったり、相手と良い関係を築くために使います。

トレーニングに取り組んでいると、どうしてもこの傾聴本来の目的(相手を知りたい、良い関係を築きたい)がおざなりになる場合がありますので、ここを意識しながら傾聴技法を使うことで初めてスキルが活きてきます。

傾聴スキルは傾聴の核の思い(相手を知りたい、良い関係を築きたい)が具体的な行動として現れたものです。

傾聴の核となる思いから傾聴スキルに繋がっている図

そのため、思いとスキルのどちらが欠けても、本来の効果を発揮しません。両方意識して使うことが大切です。

トレーニングを繰り返すことで意識せずとも傾聴技法を使えるようになると、傾聴を使いながら意識を相手に向けやすくなり、傾聴本来の効果が生まれます。

4 傾聴スキルの実践回数を増やす

傾聴はスキルですので、身に付けるためには各種傾聴技法を実際に取り組む必要があります。

知識はもちろん大事ですが、例えば野球に関する本を読んだだけでは野球が上手くならないのと同じで、スキル習得のためには実践することが欠かせません。

ロールプレイのトレーニングでも、実生活の中でも、実践する回数が多ければ多いほど、身につくスピードも早いです。実践回数を増やすために、日常生活での傾聴練習方法を解説します。

日常生活での傾聴練習方法

日常生活で傾聴を実践するメリットは、シンプルに実践回数が増える点と、真剣味が増す点です。自分は練習と思ってやっていても、相手は練習と受け止めてくれないため、練習生同士のトレーニングよりも全力で取り組みやすいです。その結果として傾聴力が高まります。私自身も実際に取り組んだ練習法を、各技法ごとに紹介します。

受容的な態度

受容的な態度は、いつでもどこでも実践できます。特に取り組みやすいのは、次の2点です。

相手の方が安心出来る笑顔
nitijyou-keicho-t傾聴時に使う笑顔は、相手の方が安心できる笑顔です。使い所は会話の時はもちろん、一番使いやすいのは毎日の朝、退勤時などの挨拶の時です。

是非朝の挨拶は、相手の方が安心出来るような笑顔で、目を見ながらやってみて下さい。ちなみに現在私がよく利用させて頂いているコワーキングスペース(共同オフィス)の受付の方の笑顔はとても素敵です。

なぜ素敵かというと笑顔の軸が完全にプロでとても落ち着いていて、こちらに対する心使いが伝わる笑顔なのです。カウンセラーの私も癒やされる笑顔です。

相手の方が落ち着ける声のトーン

このスキルは傾聴ロールプレイの時だけ気をつけていても、一朝一夕には身に付きにくいです。

声については以前読んだ中谷彰宏さんの本の中で、とても印象に残っている言葉があります。銀座トップクラスのクラブのママに自分に合う男の判断基準を聞くと、

「声が心地良いと感じられるかどうか。声はごまかせない。」

という言葉。どんなタイトルの本か忘れました。すみません。

声はその人自身の性質が現れるように思います。

傾聴の時も声はとても大切で、聴き手が暗い声だと話し手はウェルカムされている感じがせず、話す気が起きなくなります。

落ち着ける声の日常での練習方法は、出来るだけ46時中意識して取り組む事です。

私自身は傾聴がどうこうよりも、「自分の側にいるだけで、その人が落ち着いた気持ちになれるような人になりたい。」という思いがあったため、46時中出来るだけ落ち着ける声のトーンになるように気をつけていました。日常に練習を組み込むと、取り組む機会が圧倒的に増えます。身に付く速度もそれだけ早くなるのは間違いありません。

うなずきとあいづち

うなずきとあいづちは日常で非常に取り入れやすいです。

日常で誰でも使っているため、うなずきとあいづちの使用頻度を増やしたからといって何か弊害が出るようなことは一切ありません。使えば使うほど、適切なタイミングや気持ちを汲み取ったあいづちにも繋がります。

親子・夫婦間の会話で、職場の上司・同僚・お客さんとの会話などで是非実践しまくってみて下さい。相手の方も話しやすくなります。

ただ例外として、もう聴く時間がない、この話は聴きたくないわ!という時にはあいづちを入れないが吉です。時間無制限で愚痴を聴き続けるのにも限度がありますから。

オウム返し

オウム返しについてはなかなか普段の生活で実践しづらいと思っている方も多いのではないでしょうか。

相手の方が言った内容をそっくりそのまま繰り返すことは、やり慣れていない内はやっている方は違和感がありますが、やられている方は、思ったほど違和感を感じていないものです。

試しにやってみて相手の反応をよく見てみて下さい。もし違和感があるようであれば、親しい人ほどそれを言ってくれるはずです。

特にオウム返しを入れやすいポイントとしては指示を受けた時や、取り決めた日時を伝えられた時です。

例えば「9月25日の13時までに、新規で始めたリラクゼーションの仕事の内容を会社のブログにアップしておいて。」

と指示を受けたら、「9月25日の13時までに新規のリラクゼーションの仕事の内容を会社のブログにアップですね。わかりました。」と繰り返して伝えます。そのほうが伝えた方は、ちゃんと伝わっているんだなという安心感が持てます。特に日時については、すれ違いがあると大変です。

長いセンテンスで話された場合は、大事な部分を掴んで返せばOKです。どこが大事なのかも、繰り返してやっているうちに掴めます。

オウム返しのスキルは、やらない限り身に付きません。やればやるほど磨かれます。

要約

要約は、実は傾聴技法の中でも難しい部類に入ります。

私自身は要約のトレーニングを意識したことはありません。要約が出来るようになった経緯を振り返ってみると、基本は的確なオウム返しに尽きます。的確なオウム返しが出来るようになると、相手とのすれ違いがなくなりますし、気持ちも的確に汲み取りやすくなります。さらに会話の全体像も掴めるようになります。

会話の全体像が掴めるようになると、要約すべきポイントも見えてきます。

要約してみて間違っている点があれば、そこですれ違いを無くせます。間違いの無いように気を付けることよりも、要約をやってみて間違いがないか確認していくほうが大切です。

共感の言葉

暗闇に佇む女性の写真

共感の言葉は、身近な人がグチやマイナスの感情を出してくれたときに使いやすいですが、1人で出来るトレーニング方法があります。

それは普段の自分自身のマイナスの気持ちに繊細になることです。

普段の生活の中で何らかのマイナスの感情が自分の中に出た時、具体的にどんな感情が、どんな状況で出たのか、誰に対してか、どんな言葉を言われて湧き上がってきたのか等をチェックし、さらに日記のようにそれをメモをつけておくと効果的です。

これはやり方自体は簡単ですが、やってみるとハッキリ言ってしんどいです。マイナスの気持ちが浮き上がってきますので。苦しくなったらご自身のストレスのセルフケアをしっかりとやっていく必要があります。

特に男性は女性に比べて気持ちを汲み取るのが苦手な人が多いです。私も得意な方ではなかったのですが、この方法は非常に効果的でした。

自分自身のマイナスの気持ちを感じることが、それを自分で受け止めていくことに繋がります。それがさらに他の人のマイナスの気持ちを的確に汲み取っていくことにも必ず繋がります。

効果的な質問

練習する必要があるのは、相手の方が自由に答えられるオープンクエスチョンです。日常で非常に実践しやすく、特に親子関係、友人関係で取り組みやすいです。

ポイントは、「その人自身」が浮き上がる質問を心がけることです。詳細は方法は、質問技法とは|傾聴・カウンセリングでの質問の仕方のページに紹介してますのでご参照下さい。

続いて傾聴トレーニングのモチベーションアップになる方法を紹介します。

5 課題だけでなく出来るようになった点も意識する

傾聴トレーニングでは自分自身の課題(うまくやれていない点)を常に意識し、それに取り組むことでスキルアップできます。

ただし、うまくやれない自分自身を見るのは辛いです。うまくやれないとシンプルに落ち込みます。

そこでモチベーションを保つ方法として非常に効果的なのが、出来ていない点だけでなく、以前と変わった点・出来るようになった点も意識することです。例えば

  • 傾聴時に安定して相手の方が安心出来る笑顔が出来るようになった
  • 相手の会話の温度に合わせてうなずきやあいづちが出来るようになった
  • オウム返しが的確にできるようになった
  • オウム返しの後に相手の反応を確認できるようになった
  • 的確に相手の方の気持ちを汲み取れるようになった

などです。

自分自身が出来るようになったところが際立つと、トレーニングが楽しくなります。これは取り組んだからこそ得られる快感です。

傾聴のトレーニングに限らず、何か大きな目標に取り組むと、どうしてもまだ出来ていないところが目につきますが、そこばかりが目につくとモチベーションが落ちてきます。

是非2週間前、1ヶ月前、3ヶ月前、1年前の自分自身と比べて、出来るようになったところも意識してみて下さい。

出来るようになったところは行動し、うまくやれない自分自身と向き合ったからこそ出来るようになったことです。1つ1つ取り組んだ人だけが感じられる達成感は、何物にも代えがたいものだと思います。

6 自分自身の心の体力を安定させること

傾聴トレーニングはある意味「できないことに取り組み続ける」ことでもあります。できないことに取り組み続けるのは、今の自分自身を変えていくことでもあり、心の体力をかなり使います。

ですのでストレスが強かったり、何かに傷ついていたり、疲れすぎていたり、心が弱っているときには、まずそちらの回復が先です。誰でもそういう状態のときはありますし、それを感じられる繊細さが相手の気持ちを的確に汲み取れることにも繋がります。

上記のような状態のときには、傾聴技法を使って話を聴こうと思っても、会話をしていて意識が自分自身のことに向かいやすく、相手に集中して聴きにくいです。

まとめ

傾聴トレーニングは、うまく出来ない自分を意識せざるを得ないので、いくら改善点を受け取りやすいように伝えられても落ち込む時もあります。

お金と時間と体力を使い、さらにうまくやれないと落ち込むのが傾聴トレーニングです。

もしトレーニングをしていて納得がいかないことがあれば明確にしていって下さい。そして落ち込んだり、ショックを受けたり、モチベーションが下がるときがあれば、

出来ないことに取り組み続けている

ご自身に誇りを持って下さい。相談者の方やクライアントの方も出来ないことに取り組んでいるからこそ、色んな悩みが出てきます。聴き手・カウンセラーが出来ないことに取り組む姿勢は、それだけであなたが今出会っている、そしてこれから出会う相談者の方やクライアントの方の勇気付けになります。


傾聴完全マニュアル

カウンセリングに必要な傾聴力の具体的な内容、効果、トレーニング方法などをPDF全52ページに渡って詳細に解説しています。是非、ダウンロードしてご活用下さい。

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  • この記事を書いた人

井上 隆裕

2004年よりプロの心理カウンセラーとして活動。2013年に独立開業。ジョイカウンセリングスクール代表。 運営者情報

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