傾聴ボランティアをやる上で気を付けておきたい8つの事

車椅子に座った老人

先日介護施設で清掃関係のお仕事をされている方から、入所されている方に対してボランティアとして傾聴したい、「傾聴は認知症の方にも効果がありますか?」というご質問を頂きました。

傾聴は話の聴き方だけではなく、かかわり方ですので当然認知症の方にも効果があります。(認知症の度合いによっても変わってはきます。)

私自身以前特別養護老人ホームで5年ほど介護職員として働きながら、兼業でカウンセリングの仕事をしていたことがあります。その時の体験も踏まえながら、この記事では傾聴ボランティアのポイント(特に老人施設での)を6つ紹介します。

1 関係者(施設職員)とコミュニケーションを取りながら行う

これはなぜかというと、傾聴の対象となる施設利用者(ご老人)の方のことを良く知っているのは、まぎれもなくそのご家族であったり、施設職員だからです。

施設の職員は、「◯◯さんにはもっと関わってあげたいが、なかなかその時間が取れない」と思いながら働いていることが多いです。関わりが必要なご老人、さみしがりやのご老人は誰なのかをよく知っています。

私が施設で働いている時も単に関わって欲しいがために、「おしっこ出ない!」と常に叫ぶ人や、特に異常がなくとも「助けて」と人を呼び止める方もおられました。

ですので、もし可能であれば傾聴ボランティアに入る前に施設の職員の方に、特にどの人が話を聴いてもらいたがっているかを確認しておくとよいです。

必要な人へ傾聴出来れば、「ご老人も助かる」「介護職員も助かる」「ボランティア側も役に立てた実感が持てる」とみんながハッピーになれます。

2 時間を見ながら行う

もちろん会話中に時計をチラチラ見ると失礼にあたりますが、傾聴中にどのくらいの時間が経過したのかを把握しておくことは大切です。

というのも、あまりにも長時間話すと純粋に体力を使って疲れるからです。1人の方には長くとも1時間程度で「また話の続きは次回聴かせて下さい。」と切り上げたほうがよいです。「もう少し話がしたいわぁ」と思ってもらえるくらいで切り上げたほうが、次回の訪問を楽しみにしてもらえます。

次に実際の傾聴時の注意点を紹介します。

ボランティアに入り、傾聴する時の注意点

3 守秘義務は守る

これは、傾聴した際の相手の方の情報は、誰にも漏らさないということです。

会話の内容は、ひょっとしたらあなただからこそ話してくれたのかもしれません。それを施設職員や知人に漏らすと、話してくれた方との信頼関係が無くなります。他人の秘密を言いふらすような人には話しにくくなるのと同じことです。

東日本大震災での傾聴ボランティアで、この守秘義務が守られていないケースがありました。

避難所でも仮設住宅でも「お話し相手」というボランティアが来ていました。しかし、前の家族に聞いた内容を次の家族に話してしまう。もっと酷いのは、許可もなく活動報告書としてまとめられたものもありました。家族や友人を失った時の混乱や相続等の金銭トラブルといった、非常に個人的な情報すら報告されていました。個人の名前は伏せていますが、読む人が読めば誰が話した内容か分かります。それが多くの人に公開されるのです。

東日本大震災、体育館避難所で起きたこと「情報が守られなかった支援」より引用

こういったことがあるとボランティアとはいえ、もはや支援では無くなってしまいます。

例外として、話の中で利用者の方が怪我をしていたり、虐待を本当に受けているなど、身の安全に関わるようなことが出た場合は施設職員さんと相談したほうが良いケースもあります。
関連:カウンセリングの守秘義務が大切な理由と破らなければいけない時2つ

4 マイナスの気持ちには突っ込まない

これは、もし傾聴時に寂しい、不安といったマイナスの気持ちを出されたときに、その寂しさや不安がどんなところからきているのか、どういうことなのかをより詳しく聴かないということです。

もちろんマイナスの気持ちを出されたときは、「~だと寂しいですよね。」「~だと不安になりますよね。」と適切に共感しながら聴くと、相手の方の気持ちも楽になります。

通常のカウンセリングであれば、さらにそのポイントをより詳しく聴くのがセオリーなのですが、傾聴ボランティア時はそれをしないほうがよいです。

なぜかというと、あくまでボランティアとしてこちらから出向いているので、そこまでつらい気持ちを話す心構えが出来ていないかもしれないからです。

つらい事を話すのは、心がむき出しになることでもあり、話せる心の状態の時もあれば、そうでない時もあります。

話したくないことを無理に聴くと、心に土足で立ち入られたような気持ちになり、傾聴ボランティアお断りという結果にもなりかねません。

では具体的にどんな質問だと話がしやすいのかを次に紹介します。

5 利用者の方が話しやすい質問をする

今の状況や昔はどんな風に過ごしていたのか、どんな事が好きだったのか、好きなのか等、話して楽しい気持ちになってもらえればOKです。

  • 施設で過ごしてみてどうか。
  • いつ頃施設に入所されたのか。
  • 以前はどこに住んでおられたのか。
  • 若い時はどんな風に過ごしておられたのか。どんな仕事をしておられたのか。

などをお伺いして、話されたことをオウム返しなどでしっかりと受け止めて、そこから質問技法で会話を広げていくと話が止まらなくなります。

6 マイナスの気持ちを話された時はきっちり共感する

例えば利用者の方が、~に対して腹が立つ、~が不安、~が辛いといったマイナスの気持ちを話された時は、きっちりと共感する必要があります。

なぜかというと、マイナスの気持ちは実は出しにくい(話しにくい)ものです。話すとその時の辛い気持ちや、嫌な気持ちを思い出さざるを得ません。傾聴が進んでそういった気持を出され、それに対して何のフォロー(共感)もないと、出した気持ちのやり場がなくなり、話すことで余計に傷つくという事態を招きかねないからです。少なくとも傾聴ボランティアに入る方は、この可能性は知っておくべきです。

8 定期的に継続する

ボランティアですので無理をする必要はないと思いますが、月に1回か2回など定期的に継続すると必然的に信頼関係も深まってきます。始めは見ず知らずだった人が、かかわりや回数を重ねるごとに欠かせない人になってくるかもしれません。

「第1・第3火曜日の◯時から◯時まで」と決めておくと話す側としても待ち遠しい感じや安心感があります。

もちろんとりあえず行ってみて、継続するかどうかそれから決めるのも1つの方法です。※実施される際は、必ず施設の方の許可を得てから行う必要があります。

まとめ

ボランティアとして役に立ちたいというお気持ち、本当に素敵です。利用者の方にも、施設の方にも、ご自身にとってもハッピーな活動になるようこの記事がお役に立ちましたら幸いです。


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  • この記事を書いた人

井上 隆裕

2004年よりプロの心理カウンセラーとして活動。2013年に独立開業。ジョイカウンセリングスクール代表。 運営者情報

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